時は明治16年、まだ幻想郷が外界と隔離されていなかった頃……
八雲紫は、自らの力で作り出した理想郷、マヨイガでのんびりとした生活を送りながら、
妖かしの存在たちの未来を案じ、憂ていていた。
人間達の文化、文明の著しい発達により、妖怪達の存在が否定されかねないことに、
危機感を抱いていたのである。
このままではやがて、力の弱い妖怪は、存在を薄れさせ、そして消滅してしまうことになる……
紫は、それを防ぎ、回避するための方策を考え、模索していた。
そんな折。
マヨイガの周辺に展開されていた結界が何者かの手によって破られ、
紫たちの住まいは雑多なる妖怪の襲撃を受けることとなる。
結界を破ったのは誰か――
侵入者の撃退に奔走しながらも、思案を巡らせる紫。
そうした中で、彼女は、運命的ともいえる出会いを果たすことになる。
妖怪たちに襲われ、追われているうちに、
マヨイガへと迷い込んできた人間の少女。
まるで春風のような穏やかな雰囲気をまとった、巫女のような姿をしたこの少女こそが、
マヨイガの結界を消滅させた張本人であった。
決して簡易なものではなかった筈の結界を、いとも簡単に、そして無造作に破ってしまった少女。
そうした力をもつ少女との出会いにより、
紫はとある一つの可能性を見出し、かねてより思い描いていた計画を実行に移すことを考える。
妖怪の楽園とも言える、
『幻想郷』の建設。
その完成までの物語が、静かに、そして確かに、幕を開けるのだった――